エントロピー | 情報理論
エントロピー(平均情報量)の定義
情報理論のエントロピー(Entropy)は、ある確率システム全体における「不確実性」や「予測のつかなさ」を定量化した尺度であり、別名を平均情報量と呼びます。
個別の事象が持つ情報量の単なる一過性の値ではなく、システム全体で得られる情報量の期待値(確率論的な平均値)として定義されます。
確率変数 $X$ が取る値(各事象)を $A_1, A_2, \dots, A_n$ とし、それぞれの生起確率を $P(A_i)$ とするとき、エントロピー $H(X)$ は以下の式で定義されます。
\[H(X) = \sum_{i=1}^{n} P(A_i) \cdot I(A_i) = -\sum_{i=1}^{n} P(A_i) \log_2 P(A_i)\]エントロピーは、各事象の生起確率 $P(A_i)$ に対し、その事象が固有に持つ情報量 $I(A_i)$ を乗算し、すべての事象についての総和を算出します。 これは情報量の期待値の計算になります。
具体例による解釈
- エントロピーが最大となる状態(完全な不確実性)
- 状況: すべての事象の生起確率が完全に均等である状態(例:歪みのないサイコロを振る)
- 解釈: 事前にどの事象が起こるか全く予測が立たないため、システム全体の不確実性は最大化します。このとき、試行によって得られる「平均的な驚きの大きさ(平均情報量)」も最大になります
- エントロピーが最小(ゼロ)に近づく状態(高い確実性)
- 状況: 特定の1つの事象の生起確率が極めて高く(例:$99.9\%$)、他の事象がほぼ起こらない状態
- $P(A_i) = 1 \Rightarrow I(A_i) = -\log_2 P(A_i) = 0$ (確実に起きる事象の情報量は 0 )に注意
- 解釈: 事前の予測がほぼ確実であるため、システム全体の不確実性は極めて低くなります。実際に事象が確定しても、大半は「予測通りの結果」となるため、得られる平均情報量はほぼゼロに収束します。
- 状況: 特定の1つの事象の生起確率が極めて高く(例:$99.9\%$)、他の事象がほぼ起こらない状態
情報量との対比
- 情報量($I(A)$): 事象が確定した後に、その特定の 1 点から得られる個別の起こりにくさの大きさで事後的な尺度
- エントロピー($H(X)$): 事象が確定する前に、そのシステム全体が内包している「予測のつかなさの平均見込み」で事前的な尺度
エントロピーは、Deep Learning における分類問題や大規模言語モデル(LLM)の最適化で用いられる「クロスエントロピー損失」の理論的基盤となっています。